オフィス鴻

備蓄米の流通

2025年05月09日

日本政府は政府備蓄米を約20万トン市場に放出することを決めました。そもそも備蓄米とは毎年20万トン×5年分=100万トンを適正備蓄として主食用として出荷されることはなく、毎年20万トンが入れ替わるためそれを飼料用として売却する制度です。近年の米消費量は年間800万トン程度とされていますが、少なくとも5年以上保管された米は飲食店での使用には適さない品質劣化があると言われます。今回は流通業者が高値で確保した在庫をため込んでいるともいわれますが、コロナ禍と同じように不必要な分まで消費者が購入した結果、および流通業者が若干購入量を増やした結果のように思われます。

最近の米流通を中間物流の観点から考察してみると、徐々に高級米生産地が北上してはいるものの店頭価格がこれだけ上昇していることを鑑みれば、需給バランスから米の中間流通事業者が一定量を確保していることが流通量が減少した結果とも言えるでしょう。編集人の自宅では福島産の米を通販で購入しています。しかし、価格が徐々に下がってきたとはいえさすがにこれまでの2倍程度の価格で高止まりしている現状です。もう1点触れたいことは、この備蓄にどれだけの費用と意味があるのかと言うことです。仮に1坪2,000円台(地方の低温倉庫を想定しています)の倉庫に100万トンの米を備蓄すればあくまでも概算ですが1坪500Kgとして年間約100億円(運送費等を含む)の保管料を高いとみるのか、または適正とみるのかは意見が分かれるところです。

食料安全保障の観点(実際は不作時への備え)からも備蓄米(1995年:主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)の必要性は理解できるのですが、今回20万トンを市場に放出しても年間消費量の2.5%に過ぎません。中間流通事業者(主に問屋)も高値で仕入れた米が時間を経るごとに価格・品質が下がることは承知していますから、投機目的ならばババ抜き状態にあるのかも知れません。