人材派遣会社の破綻
2025年05月06日
人材派遣業務を営んでいたアクロスソリューション社が昨年11月に破産手続きの開始決定(破綻)を東京地裁から受けました。同社は約1,000人のスタッフが登録されており、主に家電量販店(携帯電話)・コンビニなどへの販売員派遣業務をメインとして昨年度は約40億円の売り上げで黒字決算とされていましたが、「社長が会社の決済に必要な印鑑等を全て持ち出したまま音信不通になっている」としてその後の対応は同社無給で事後処理を行っていたと言います。実際には数度の年金未納等で資産の差押えが行われていたようで、社長の関連企業に不正送金を繰り返していたことが信用調査会社によって判明しています。
考え得るのは年金等の未払いが起きていたことを鑑みれば、以前より資金繰りが厳しかったようで粉飾決算をしていた可能性があると言うことでしょう。ただ経営トップとして破綻に至った経緯や今後の方針について全く話をしておらず雲隠れしたことは道義的にも決して許されるものではありませんが、最も迷惑を被ったのは同社従業員と派遣従業員でしょう。給料の未払いは約10億円とされており1人当たり100万円に相当します。債権差押えの優先順位は税金・社会保険・給料が上ですから恐らくは売り上げの水増しなどで金融機関等から不正に融資を受けていた可能性も指摘されています。またあくまで仮定の話になりますが、反社会的勢力とつながりのある金融会社から高利の貸し付けを受けていたとすれば、事業停止寸前に多額の現金を引き出したコンプライアンス違反事案にもなるでしょう。
先程携帯等の販売員を派遣していたことを挙げましたが、全体の売り上げの90%程度を占める同業界全体が景況悪化にあり、資金繰り面でも支払いサイト延長などが要請・実施されていたことも想定されます。同販売店等が直雇用してくれる可能性もゼロではありませんが、いずれにしても人材派遣事業自体に差別化要因(優秀な派遣社員等)がなければ今後第二の同社がでてくるかも知れません。