オフィス鴻

日本郵便のM&A

2025年06月08日

今年2月にヤマト運輸との協業スキームが不調に終わった日本郵便が、新たに特別積合わせ事業を中心とするトナミHDを750億円で買収することが報道されました。以前はオーストラリアのトール・ホールディングス社買収後に約6,000億円の特別損失を出しており、正直なところM&A戦略による成長軌道が有効でないように見受けられます。今回のトナミ社のM&Aについて詳細は報道されていませんが、長距離輸送・宅配などの分野での効率化を見込んでいるようです。しかしトナミグループ各社の営業実態がどの程度日本郵政側に理解されているのか、特積事業会社の企業再生に関わったことのある編集人には理解しがたい面があることは事実です。

同じような失敗を繰り返さないためには、日本郵政側に本当に物流事業(特に運送事業)経営に通じた人材がいるのかがポイントのように思われます。日本郵政のビジネスは郵便(信書)・ゆうパック(個配)がメインですが、拠点間輸送は日本郵便輸送社(旧日本郵便逓送社)と協力会社が担っています。また同社HPによれば2023年度決算における売上高が1,308億円(利益は未記載)とあり、日本郵便の売上高が2兆7千億円(経常利益800億円)で5年前の決算に比べて同12%減(同53%減)であることを考えればどの程度の相乗効果が見込めるのかは不明瞭でしょう。今回の買収先が特積運送業界の中でも際立って目立った存在ではないトナミ社ですから、穿った見方をすればドライバー不足(これはトナミ社も同じ)が多少改善する程度と言うのが実情のように思われます。

特にAmazon社との契約では日本郵政を含めた宅配大手が様々な変遷を経ながら現在の状況にあることを鑑みれば、準大手運送事業者であるトナミHD社をM&Aしてもまた元の木阿弥になる可能性は少なからずあると編集人は考えています。長距離拠点間輸送は積載効率もさることながら如何に年間物量波動を抑え込む配車運用を行うのかが大切ですから、今後の成り行きに注目したいと思います。