オフィス鴻

低価格競争からの脱却

2023年10月09日

日本企業の中で、平均年収上位(平均2千万円)の企業に株式会社キーエンス(KEYENCE)社があります。自動制御機器、計測機器、情報機器などの研究開発・製造販売を行っている企業ですが、海外売上高比率は50%を超え世界の200余の拠点で事業展開しています。特徴的なのは、顧客の気付いていない本質的な問題(潜在ニーズ)について、独自の視点で顧客の現場に入り込んで製品化する点にあると言われています。当然、似たコンセプトの製品が市場に大量に供給されれば価格競争に巻き込まれ、自社の成長を自ら製品に反映(顧客視点で過剰なサービスメニューを省くこと)出来ますので、リスクを取りながら高い収益性を上げられているのだと思われます。

一般的に、グローバル市場での大企業はプロモーションにプル型(顧客が主体的に商品・サービスを購入するように仕向ける)を用いることが多く、広告やブランド戦略などで提供価値(コンセプト)を遡及する代わりに初期費用が固定費化(配賦)されるので、規模の経済による高利益率ビジネスへと費用対効果の上昇が明らかになるため、事業の取捨選択がしやすい側面があるのだと考えます。また、BtoBビジネスで顧客からの支持(指名買い)が得られれば、簡単に競合他社が入り込んでいく余地が少ないことになります。

一方、プッシュ型プロモーションでは営業担当者増員が売り上げ増加や市場シェア率向上をもたらす半面、固定的人件費の割合が高くなるため、結果的に低利益率から脱却できない可能性が高くなります。編集人はP&G社のプロモーション活動を15年程中間流通事業者の立場で見てきましたが、小売業側から見ても別格の存在感があり、価格競争に巻き込まれにくい販売方法(新商品のプロモーション、メニュープライシングなど)と最終的な顧客である消費者(BtoC)の指名買いを促すようなマーケティング手法を取り入れていました。当時からデータ分析力は他社と比較してダントツの印象があり、日本企業とのビジネス感覚の違いを教えられました。