オフィス鴻

窃盗被害と販売機会損失

2024年05月23日

小売業では、以前から万引き・窃盗行為等が原因と思われる在庫損失が問題視されてきました。最近のアメリカ小売業では、インフレの長期化、治安悪化、万引き被害による業績への影響が無視できないレベルに達しており、一部では店舗閉鎖などの強硬対策も始まっています。またイギリスでも年間18百億円の万引き被害や暴力行為が確認されているそうです。万引き等による販売・在庫機会損失は「シュリンク(shrink)」と表現され、ネット取引発達が転売を容易にしたり、犯罪組織が新たな資金源にするなど、人手不足の隙をついた形で大きく表面化してきた事象だと思われます。

日本の小売業でも、高額品や特定商品に追跡用タグをつけ、出口で警報が鳴る盗難防止策を講じる企業も増えてきました。30年程前の話で恐縮ですが、小売業の平均粗利率は15~20%が適正水準と言われており、失われた30年と表現される時期と重なったため、デフレ傾向により販売数量は変わらなくても粗利額は減少する傾向にありました。また、イオンが不動産ビジネス(イオンモール)を拡げ、多くの大規模小売業がそれまでの商品カテゴリーの垣根を越えて安価なPB商品(最近は高価格帯商品も増えました)主体の幅広い商品構成へと展開していた時期とも重なります。

編集人も、従業員が開店前の店舗から高額商品を盗み出し、買取店で現金化した事件の処理を担当したことがあります。百貨店などでは業者や従業員の出入り口に警備員を常駐させて荷物チェックするのですが、その店舗では警備員によるチェックが形骸化していたため簡単に盗品を持ち出せたようでした。また、消費者は、商品大幅値上げに加えて盗難防止コスト(病気が原因の窃盗癖もあるようです)まで負担させられていることになる訳です。いずれにしても、ひとりの日本人として分別ある行動をとって頂きたいと思っています。