オフィス鴻

これからの地方銀行

2024年03月17日

東洋経済の調べによれば、全国に27ある地方銀行系の証券会社が、株式市場の軟化と「仕組み債」の販売停止により赤字決算となっているとのことです。「仕組み債」とはデリバディヴの一種であるプロ向けのオプション取引ですが、個人投資家向けにも販売され、株価・為替変動による下落リスクの説明が十分にされておらず金融庁が警鐘を発した商品です。一部の著名人がこの仕組み債で多額の損失を出したことが報道されていました。編集人の自宅にも営業の電話が何度もありますが都度丁重にお断りしています。最終的には、リスクを負うのは購入した個人投資家であり、銀行・証券は手数料(2~3%程度)収入を得るための手段に過ぎないのだと思います。

銀行がリスクのある商品を不十分な説明の下に販売することに問題があるのですが、最近は低金利政策が見直される方向にあり、金融行政が日本の置かれている銀行運営と経済状況を表しているように思います。しかし、国内銀行が収益力を失っている現状から鑑みると、顧客の利便性よりも銀行・証券・保険におけるユニバーサルバンクシステム(銀行業務以外に投資銀行業務が認められること)以外にも、公告・システム販売・人材派遣業務などが解禁されたことで、ビジネスの範囲が拡がったとも解釈できます。企業にとって金融(融資)はキャッシュフローの生命線であり、金融機関にとっては収益事業の根幹をなすものですから、この複合的なメリットは大きいと感じます。

ようやくコロナ禍から経済活動が正常化しつつありますが、上場大手企業の好決算の裏で全国的に中小企業の倒産が増加していると東京商工リサーチのレポートにありました。特にサービス業のうち飲食業の倒産が急増しているそうです。人手不足、ゼロゼロ融資、物価高などの諸要因が重なってのことでしょうが、最も手厚い補償を受け(元々廃業率が高い)で多額の国費(税金)が投入されています。貸出金融機関は手数料収入を得て、全く損失を出さない仕組みであり、なんとなく釈然としない部分が残ります。