オフィス鴻

令和4年度東大祝辞(要約2)

2023年04月15日

今、世界はあるひとつのバランスを失ってかけがえのない命が奪われています。現実の「戦争」を世界から無くしたいとの想いは、世界で上映される機会が増えた頃に願った気持ちでした。先ごろ、世界遺産の金峯山寺というお寺の管長様と対話する機会を得ました。金峯山寺には役行者様が鬼を諭して弟子にし、修行をして歩いた歴史が残っています。また本堂蔵王堂には、山から伐ってきたままの大きな樹の柱が御堂を支えています。それらの樹は全て違う種類で、それはまるで森の中に自らが存在しているかのような心地になるとのことでした。その存在を確かめてみると、それぞれの柱がそれぞれの役割でそこにあって、どれひとつとして何かと比べられることなく、そこにきちんと自らの役割を全うしているようです。

元来、宗教や教育の現場にはこういった思想があり、それを次の世代の人たちに伝える大切な役割があります。あなたが今日ここにあって、明日からかの大木の柱のように、しっかりと何かを支え、しっかりと何かであり続ける人であってほしいと願います。管長様の言わんとすることは、例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単であるけれども、その国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか?誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?

また、あなたが今いる場所にはどんな光景が見られますか? あなたは、何を見て、何を描いてゆくのでしょうか? その未来は明るいですか? この自由な学びの場でたくさんの人に出会い、たくさんの本を読み、様々なことに挑戦して、見た景色、聞こえた音、匂い、味、肌触り、そこから生まれた感情を大切に、どれだけ小さかろうとあなた自身の想像力をもって真理を見つけるたった一つの窓の存在(「夢」)を確かめてください。そして、どこまでも美しいこの世界を自由に生きることの苦悩と魅力を存分に楽しんでください。