オフィス鴻

物価高騰と適正価格

2023年10月06日

中小企業等が保証付き融資の返済を滞っていたり、返済不能(倒産)となった時に信用保証協会が肩代わりすることを「代位弁済」と言います。コロナ禍では飲食業を中心に手厚すぎるのではないかと思えるくらいの資金繰り支援(民間・政府系金融機関、ゼロゼロ融資など)が実施されました。特に、経済活動が再開される中で飲食業・宿泊業などの売り上げは回復傾向にあるものの、円安・資材や原料の高騰・人手不足などで利益確保には至らず、資金ショートするケースが多いようです。調達コストの価格転嫁は大手企業(特に食品)を中心に頻繁に行われていますが、宿泊業でも客室整備担当者不足から客室稼働率を落とさざるを得ず、通常価格(価格比較サイトなど)の2倍以上に設定するなど、消費者側にも大きな影響が出ています。一方で富裕層による高額商品購入の増加や株高傾向などが報じられていますが、恩恵を受けられない層との格差が拡がっているように思えます。

現在の日本経済を見渡すと、2023年の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は2.5%程度の上昇と見込まれていて、インフレ傾向自体は右肩上がりで推移してきています。世界的な資源価格上昇が円安とインフレを後押しする形に見えますが、今後の賃上げやサービス価格引き上げなどにより再び物価が下振れするデフレリスクも残っていると日銀展望リポートにありました。編集人の感覚では、低金利政策は身近なところでは短中期的に中小企業の倒産リスク・失業者増加、中長期的には住宅ローン破綻が増加するように思います。

なお、適正な利益が得られるビジネスを展開している企業ならば、余程の事情があっても突然価格を2倍、3倍に値上げするという判断はしません。また、消費者への説明がないステルス値上げ(内容量を減らす、便乗値上げなど)を行う企業は、どのような理屈や言い訳があったとしても、いずれ一般消費者が気付いた時にはブランド価値が棄損したり、ロイヤリティを喪失するという致命的なマイナスの影響を受けるように思います。