オフィス鴻

生産性と業務改善課題

2024年05月10日

政府が最低賃金を段階的に大幅に引き上げたことで、政府が推進する終身雇用制・年功序列型雇用体系から生産性・スキル重視への政策転換により、中小企業経営に対する支援策への関心が高まっています。これまでも、中小企業へ多くの支援が行われてきましたが、既に廃業・倒産が増加していることからも本来経営が成り立っていない状態の企業への支援は、労働力流動化と生産性向上を妨げているという意見も耳にします。また、大企業においてもメンバーシップ制の特定企業内(勤務先)でしか通用しないファーム・スペシフィック・スキル(Firm specific skill)の問題が指摘され、働き方改革による生産性向上には業種・職種が変わっても持ち運び(ポータブル)できる汎用性の高いスキル(ポータブルスキル)習得が必要だともと言われます。

この低生産性から脱却するための議論は、北欧(スウェーデン)方式が参考にされていることが多いように感じますが、低生産性で苦境に陥った企業には政府による救済を行わない代わりに、社会全体でのナレッジ向上(知恵・ノウハウなど)により、生産性の高い企業への労働力移動を可能として持続的に賃金上昇に繋げる施策と言われています。つまり、倒産・廃業等で企業が淘汰される代わりに社会全体で労働力を吸収する方式と言い換えることも出来そうです。編集人はスウェーデンの諸事情についての知識は殆どありませんが、恐らく現在の日本と共通しているのは経営資源をより効率的に使うための業務施策(IT化・DXなど)に中に、効果が見込めない業務の洗い出し・廃止と既存業務フローの改善を進めるにあたって、大企業の規模の論理と下請けに対する中間搾取構造で成り立っている業種が多いことから、その間にあるアイドルタイムが生産性向上への弊害となっているのであろうと推測しています。

幸いと言えるのかはわかりませんが、これまでの日本の産業・労働構造を変化させる貴重なタイミングにあることは確かで、この先で確実に成果の果実を摘み取るには個々人の意識改革と痛みは避けられないと感じます。