オフィス鴻

約束手形

2024年05月19日

政府は下請法改定(運用変更)に伴い、約束手形の運用指針を60年ぶりに改める方針を出しました。具体的には下請法運用基準に合わせる形で、120日から60日へとすることで中小企業の資金繰り支援を進めるのが軸となりそうです。以前は現金化まで210日の台風手形、300日のお土産手形、1年の七夕手形などもありましたが、数年内で段階的に約束手形自体が廃止される方向です。編集人の過去の勤務先でも、取引先が約束手形を発行することがありましたが、資金(現金)化するまで間のつなぎ融資や手形割引には手数料がかかるため実質的な値引きと同じです。最近ではファクタリング(取引債権を担保に融資する)を行う金融機関・金融業も増えていますが、取引先の与信状況次第では金利が高く設定されるだけでなく債権譲渡登記などの最終手段の選択に至るケースもあります。

約束手形は当座口座開設と手形振出承認手続きが必要ですが、債務者に通知することなく自由に譲渡することが可能であるため、取引契約書の第三者への債権譲渡禁止条項に抵触しない点では利便性があるものでした。ただし、約束手形の裏書(裏面に譲渡日付、双方の住所・氏名又は屋号・代表者名・押印)が必要で、全く知らない企業へ転々と譲渡されることもありました。そこには裏書譲渡人は、その支払を保証する必要がある(裏書の担保的効力)裏書の効力を約束手形が持っていたからです。しかし、裏書する側からすれば全く知らない企業等から支払いを求められるリスクが高いことも事実でした。

なお、手形交換所は2022年に廃止され金融機関では電子取引へと移行しましたが、未だに紙の約束手形が流通しているのが現状だそうです。その理由は金融機関等からの融資返済・仕入れ代金決済などで資金繰りが厳しい企業(旧来の大手企業は慣習的に発行していることもある)が債務返済の一手段として利用できる点にあります。しかし、1回不渡りを出すと、その事実が金融機関に知られ、さらに6ヶ月以内に2回目の不渡り(口座の資金不足)を出せば銀行取引が停止されますから事実上の倒産と言えるでしょう。