オフィス鴻

高学歴者のポスト選択

2024年05月09日

衆議院のHPでは、昭和61年(1986年)の国会で現在のポスドク(ポストドクターの略)問題に関する質問主意書が掲載されています。そこには、当時の大学院生が「個人的事情(学業不振など)で発生するのではなく、我が国の貧困な学術体制そのものから構造的につくり出されてきたものである。」という主旨の質問が掲載され、授業料減免・免除措置、奨学金返還免除期間の延長などの金銭的部分と、就職難の実情について質問者の意見が載せられています。なお、オーバー・ドクター(ポスドク)とは博士号取得後に研究を続けられる先に就職できず無償で研究室のポストが空くのを待っている大学院生を指し、安定した研究職に就けないで非正規やアルバイトなど不安定な生活を送らざるを得ない中高年層が多いそうです。

1986年と言えばバブル景気が始まった時期と重なり、大卒者は売り手市場で就職難とはほぼ無縁の時期で、大学3年の後半には大企業を中心とした分厚い応募用紙が自宅に届き、また所属ゼミを中心にOB/OG訪問などが盛んに行われていました。その中でも大学院に進む目的は研究をしたいか、就職したくないかが中心で、最近のように学歴ロンダリングという、就職活動で有利になるよう高ランク大学院への進学を目的としたものもではなかったと記憶しています。

また、かねてより資源のない日本で安定した研究生活と成果を実現するためには、科学の基礎研究分野への国策拡充が必要だとノーベル賞受賞者などが異口同音に語っています。京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥前所長)でさえスタッフの9割が非正規雇用(任期制)のポスドクだそうで、学術拡充に専念できる正規雇用の常勤ポスト増加策以外でもベンチャービジネスと手を組んでビジネスと研究の両輪で活躍する研究者も増えてきました。政府も社会構造改革が必要な今だからこそ、過去最高の税収となっているこの時に、選挙や利権へのバラマキ対策ではなく、数十年先を見据えたゲノム技術の実用化など技術立国政策に資金を振り分けて頂きたいと思います。