オフィス鴻

アメリカ労働者の報酬

2023年11月29日

以前、アメリカのトラックドライバーの給与体系と大幅な給料UPについてコラムに記載しました。その後、Merkma社の記事に大手自動車メーカー労働組合(UAW)が年収2,000万円の処遇を要求している、さらに大手国際宅配UPS社は労働組合に年収$17万(約2,500万円)を提示したと一時的にトレンド入りしました。また、世界的な物価高の影響を受け、日本でも2030年代半ば(あと10年以上先)までに最低賃金を1,500円にすると岸田首相がコメントしていますが、産業・職種別の適用基準などの具体的な施策が示されておらず、単なる政治的ポーズに過ぎないかも知れませんね。

調べてみたところ、UAWの最低賃金は現在$64(約9,000円)で労使で締結した4年協定(契約)の更改に向けて約25%の賃上げが実現したとこことで、退職金・年金・時短なども含んだうえでの要求だそうです。ただ、いくらストライキを行ってもレイオフ・リストラが当然のように行われている国ですから、労務倒産のような形で破産法適用になれば、いくら人手不足とは言え新たな求職者は殺到するので、自分たちの厚遇を簡単には手放さないと思われます。また、UPSはアメリカのコントラクト(契約書)によくある細かな付帯条件を付けた上での最高額であり、最初は過度な体力的負担の大きいパート契約からスタートし、5年間の勤務後に優秀な成績を収めた一部のドライバーのみに医療保険などを加えた権利が与えられるようです。ちなみに、UPS日本法人の正社員ドライバーは年収6~7百万円程で、契約・伝票作成など英語でのコミュニケーションが要求されると聞いたことがあります。

それ以外でも、アメリカでは各種労働者、ホテル関係、医療従事者のストライキが頻発していて、最近ではハリウッドの映画業界が肖像権・著作権・AI脚本の排除などを求めて俳優組合・脚本家組合が63年ぶりの同時ストライキをが決行され、7%の報酬増で決着したようです。アメリカ全体でホワイトカラー・ブルーカラーに関わらず富の偏り(所得格差)に対する国民の動きがうねりとなっているように感じます。