オフィス鴻

ヤマト運輸と日本郵政

2024年04月16日

ヤマト運輸から今年1月末での雇用契約終了を一方的に通告された従業員が、事前協議もなく余りにも乱暴なやり方で誠実さに欠けるとして、茨城県の労組が会社側との団交を求めたそうです。ヤマト運輸がサービス商品構成を変更してメール便等の配達を日本郵政に委託することは企業戦略の1つであり、業務提携による効率化・収益化を進めること自体は企業として当然の経営判断であると思います。一方、これだけ批判があがるということは経営層から前線で働く現場管理者に契約終了の主旨や通告方法に対して適切な情報・進め方などが伝達されていないことの表れでしょう。

ヤマト運輸は1997年に信書に当たらない印刷物需要を取り込むメール便サービスを開始し、郵政改革でハガキ・手紙配達業務も取り込む予定でしたが、一般信書便業務に関する法律(全国へのポスト設置、全国一律料金、3日以内の配達)が壁となり参入を断念しました。そして、運送2024年問題対策が2社の協業を促した結果、クロネコDM便サービスを廃止することで「一般信書」での日本郵便との対立に幕が下ろした形です。また、信書でも荷物と一緒に送る無封の添え状(礼状など)や送り状・領収書などは例外として宅配便での配達が認められてるほか、特定場所間での巡回集配サービス、3時間以内の急送サービス、800円を超える料金のものは、総務省が許可すれば特定信書事業(参入障壁が低い)分野には大手宅配事業者(佐川急便、西濃運輸など)が参入しています。

また、一部報道ではヤマト運輸側は小型荷物の配達委託先の個人事業主3万人との契約も年内に終了するとしていますが、配達員にはGPS機能付携帯電話が貸与され、配達ルートを記録・管理されており「労組法上の労働者」にあたるとして東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。これに対して「個人事業主との関係において、労働組合法上の使用者にあたらない」という団交を拒否したヤマト運輸側の主張も、既に複数の判例(直近ではUberEats配達員の労災認定)から鑑みれば、正当性に疑義が生じると思われます。