オフィス鴻

リスキリングの目的

2023年10月03日

8月の日本経済新聞に、生成AIスキル習得のeラーニング講座受講希望者が急増しているとの記事が掲載されていました。ある企業では30時間で15万円のオンライン講座を開設したところ既に1千人を超える申し込みがあったそうです。リスキリングの背景は、国の「人への投資1兆円予算」が挙げられますが、成長産業(新ビジネス・デジタル化など)への労働移行が日本のGDP(国内総生産)と所得向上に繋がるための施策だったと認識しています。これまで無駄が蔓延していた業務改善を進める起爆剤としてDXや生成AIの活用があり、その先にあるリスキリングのゴールイメージができていない企業(経営・人事)が多いことが、言葉は悪いですがオンライン・ラーニング導入へと施策が偏る原因だと考えています。

ここから先は編集人の個人的な感覚ですが、これから企業にとって大切なのは、ビジョン・理念の策定、新規事業開発などの知的労働の進化であり、生成AIではできない仕事が新たな労働価値として再置換されていくことだと思います。今更ながらですが、PC(Windows95)が世の中に爆発的に普及し始めた1998年以降と状況は異なりますが、日本では業務は変化しても直接的な人員削減(間接的に採用を抑制する程度)は起きませんでした。言葉に踊らされず、されど企業の将来の姿を目的を十分吟味してリスキリングを進めることが将来の日本を次世代にバトンタッチするにあたって必須だと考えます。

なぜ従来の仕事がなくなるのか、これから必要とされる仕事とは何なのかをしっかりと考えていかなければ、単にラーニングシステムを導入するだけでは成長戦略は描けないでしょう。また、成長に見合った報酬が得られることがセットでなければ、人手不足の日本で「会社と自分の将来像が描けない企業」は成長産業に人的資源は供給されないと思います。現在は労働時間の削減だけでなく、業務自体の消滅・失業を懸念する一部の人たちが先を競って学んでいる感がありますよね。本当にリスキリングが必要なのは、中高年齢層や一般事務職ではなく経営層・幹部社員だと編集人は思っています。