オフィス鴻

人材流動化の波(1)

2023年05月28日

食料品や消費財、エネルギーを中心に値上げが頻繁に実施され、物価上昇(インフレ)を肌で感じる機会が増えました。また、最近大手企業では久しく20万前後が続いていた新入社員の初任給が5万円程引き上げられたり、また平均5%超の賃上げを行う企業の取り組みが報道されています。企業規模や業績による違いはあれど、働く方々の処遇が改善することは喜ばしいと思う反面、多くの労働集約型産業(主にサービス業種)では、最低賃金の大幅改定と生産性向上が連動しないまま、準固定費である人件費や社会保険料が引き上げられ、経営を圧迫していく新たな課題も発生しています。

現在、北米やオーストラリアの農業・飲食業での人手不足により、賃金・チップ・労働時間等を含めた好条件で海外で働く日本人(永住者とは異なり、1労働者)が徐々に増えているそうです。もちろん、資産家、経営者、高度専門職はどこの国でも優遇されますし、日本食調理人(寿司は「O・MA・KA・SE」が流行り)の中には破格の報酬を手にする方もいるそうです。その中には、明らかに日本の食文化には程遠いスナック感覚の新飲食ビジネスもあるようですが、一定レベルの語学力、社会保障制度の違い、医療費の高さ(日本の健康保険は適用されない)、レイオフリスクは日本より遥かに高く、チャレンジには十分な検討が必要でしょう。

また、最近の日本の報酬は外資系企業に多い「職能ジョブ型(ジョブディスクリプション)」と「ストックオプション制度(故稲盛和夫さんは反対意見でした)」に近い形で企業の人事制度設計(企業内所得格差の傾向)が始まってきました。しかし、前提として非定形業務の多い上級職のスムーズな移行と処遇(組織構造改革)と適正なポジション数設計に基づいた業務生産性向上があり、一部の資産家や高所得者層を除けば、現政権が盛んに「異次元(単なる賃上げとは異なる)」とアピールする所得増加の恩恵を、個々の努力なしにそのまま受けているだけの人は、少ないのではと感じています。