オフィス鴻

労働審判(大阪地裁)

2024年03月21日

毎日新聞の掲載記事によれば、大阪地裁で行われた未払い残業に関する労働審判で会社側に解決支払金の支払いを命じる一方で、労働者には口外禁止条項を附したことが報じられていました。この論点は口外禁止条項を拒否する労働者にとって何らかの問題があったことを地裁側が懸念した結果の判例と思われますが、通常の労働審判や退職にあたっては会社側・労働者側で合意書を締結する際に守秘義務として口外禁止条項を付記します。その目的は、合意内容が誤った情報に変換されて他の従業員に伝わることが企業にとっておおきなリスクとなり得るためで、解決金が増額されること(例えば有給休暇未消化分に相当する金員や慰労金の支給など)もあります。一方で、他地裁では口外禁止条項は違法とした判断が行われたケースもあるようですから、ケース・バイ・ケースであるようにも思われます。

一般的には弁護士や労働審判を通じて未払い賃金請求や地位確認を求めて双方が合意することは決して少ない訳ではなく、口外禁止条項に違背した場合は企業側から賠償請求請求訴訟を起こされる可能性があることも踏まえておくべきでしょう。しかし、労働審判や訴訟ともなれば相応の費用と時間を要することになりますから、仮に地位確認が認められたとしても同僚から一定の距離を置かれた状況で職場復帰することも考えられ、現在の日本の法理では金銭での解決(合意)が最も有効な方法だと思います。もちろん企業側に不当解雇などの重大な責任・違法行為があれば話は別ですが、従業員の就業規則違反、勤務態度不良、能力不足などが原因であれば、整理解雇とは異なる普通解雇・懲戒解雇の正当性(正当な理由)が認められますから、人事・労務担当の経験者であれば解雇理由・手続きに不備が無いように進めることになるでしょう。

いずれにせよ、所属している(いた)企業と対峙する訳ですから感情的なしこりが残ることは間違いなく、企業側は労働法等に精通した弁護士・社内担当などと違法にならないよう運営していくこと、従業員側は会社の不法行為に関する何らかの証拠を収集しておくことが大切だと考えます。