オフィス鴻

官製春闘と税制改革

2024年05月18日

政府が積極的に推進する「働き方改革」に社会が反応した1つのケースとして、経団連加盟企業・ゼンセン同盟などの春闘集中回答日に殆どの企業経営側から5%前後の賃上げを含む満額回答が示されました。この回答は数十年ぶりの高水準だそうですが、日本の労働者全体からすれば大企業などほんの一部が対象になっているに過ぎないことはご承知の通りであり、今後中小企業で働く方にも好影響が波及するのかは今のところ不明です。その理由の1つとして、相変わらず悪質な下請法違反事案が絶えないことが挙げられます。最近ではコストコや日産自動車といった企業でも減額行為に対する勧告がだされています。言い換えれば、これまで会社ぐるみで違法状態の常態化が行われていたことの裏返しとも考えられるでしょう。

また、災害復興税や自治体独自の課税(実質増税)、さらに社会保険料率の引き上げなどが相次いでいますから、物価上昇分を考慮すると国民全体が公平に恩恵を受けられる訳ではなさそうです。その他、令和6年度の税制改正では、子育て世帯に対する税制改定(所得税・住民税の扶養控除額改定、児童手当の高校生への拡大)が発表されていますが、法律上過去に遡及して実施される訳ではないので、新たに現状に見合うような世帯所得基準などを導入しない限り、どうしても不公平感や抜け道があるのは仕方ないとするには納得性に欠けるように思います。

資本主義国家と言われる日本ですが、海外諸国と比べれば与党の選挙戦略が社会主義的なバラマキ型政策に偏っている感が否めないと思う方もいることでしょう。フランスの年金受給年齢引き上げなどが国家の将来のために国策として行われていることを鑑みれば、日本の労働法改正(同一労働同一賃金、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、フリーランス法など)が多様な働き方・生活スタイルへの移行に対して短期的な視点で実施されていることに違和感を覚えてしまします。決して日本が海外の真似をする必要はありませんが、国民の自立を促すことも必要に思います。