オフィス鴻

年収の壁と社会保障(2)

2023年05月19日

「年収の壁」問題では人手不足対策、実質可処分所得減少(配偶者の扶養を含む)の解消、不公平感の是正が大きな課題です。また、派遣労働や雇用に近い請負が調整弁となり、社会保険料の事業主負担逃れや労働基準法等の適用・抵触逃れなど、倫理的に問題のある事業者も増えてるように思います。

日本の税制が個人単位負担の原則であることを鑑みれば、短時間労働者にも給与所得者の社会保障と同じく、所得に応じた社会保険料の負担を求め、被用者保険(厚生年金・健保・雇用保険)の適用対象である各種給付(傷病手当給付金・出産手当金・雇用保険の失業給付・障害年金・助成金など)を受けられるよう、施策に優先順位をつけて公平性をも担保(考え方は人によって異なる)できる制度設計が本筋だと思いますが、昭和20年代から殆ど改定されていない年金に関連する法令もあり、検討・改定を進める必要性を感じます。

また、最低賃金の大幅引上げが一部の従業員(最低賃金付近の時給者で社会保険未加入)だけに適用される傾向が強く、同じ事業所内で働く社会保険料の対象である非正規労働者(給与所得者)の労働意欲・生産性への影響が懸念されることも大切な論点です。また、日本の社会保障とカナダの制度が良く比較されますが、生涯未婚率や離婚割合の増加以外にも、経済的に困窮・孤立しない自立支援策の1つとしてこの問題全体を俯瞰して検討する必要性を感じます。最後に政府が「異次元の子育て支援策」を発表しましたが、結局は「こども特例国債」や「社会保険料引き上げ」など、国民の財源負担を検討しているようです。後世に禍根を残さないよう、コロナ禍でのワクチン過剰発注問題、医療機関の不正受給問題と返却命令、不公平感(子育てや家事を行う世帯主も多い)の解消など、不都合な課題解決にも目を向けて国民に説明することが大切だと感じています。