オフィス鴻

日本式ジョブ型雇用の課題

2023年10月07日

日本人の給料がやっと一部の若手を中心に上昇し始めました。これまでの賃金上昇率の低さは、年功序列・終身雇用・定年再雇用が生む利益配分というバイアスの存在、労働生産性の低さ、国際競争力の低さ(高品質・高価値と見合わない低利益)などが絡まり合っていることが一因と考えられていました。平均勤続年数が数年程度で頻繁に入れ替わりレイオフができる欧米系企業では、最新の労働環境と共通インフラの整備が人材流動化と労働生産性向上の両立を促す源泉であり、中途入社でも最初の出勤日から即戦力として活躍することが可能です。

また、日本では1兆円のリスキリング予算が組まれましたが、組織・教育分野への投資効果目標を決められない企業も多く、これまでの「人に仕事をつける」ことの繰り返しは、生産性向上に基づく賃金上昇効果の足枷となることが徐々に認識され始めています。つまり、これからは同じ企業で同じ仕事をしている限りは一部の管理ポジションに就く従業員以外は賃金が殆ど上がらない(最低賃金改定に依る形式的なベアは続くでしょう)ことが当たり前となり、海外のダイバシティ―(多様性)やインクルージョン(受容)を真似したところで、給料の差を明確に説明できる人事部門は殆どないと思います。

日本でも優秀な人材ほど時間価値に重点を置くため、合理性・納得性の低い組織運営に早々に見切りをつけ、厳しい労働市場で成果を出すことがグローバルスタンダードで給料を上げていくのが一般的であり、自ら厳しい競争環境へと飛び込み他社へと転職していきます。会社の理念やビジョンに共感し自律的スキルアップを進める人材ならば、今の会社での処遇アップも、他社での活躍機会も広範な視点で選択できる時代になったのだなと感慨深いものがあります。