オフィス鴻

日本型雇用の変化

2024年03月20日

世界では、国ごとにそれぞれの社会慣行があり、特に労働に関する考え方は様々です。2010年にはギリシャが事実上のデフォルト状態となり、資金援助の条件として国民の25%が国家公務員であり、年金受給開始年齢が早いことへの改善が指摘されまし。最終的にギリシャは年金受給年齢引き上げや減額を選択してEUからの財政支援を受けデフォルトを回避しましたが、同じEU圏にあるフランスでも年金改革法案(年金受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げ)が成立し、フランス各地でデモや暴動が起きました。日本でも2013年に60歳から65歳(男性)に段階的に引き上げられ、現行の「70歳までの継続雇用努力義務化」が更なる年金支給年齢引き上げへと改正される可能性があります。

アメリカでは、職務契約書にない業務・賃金・異動・差別(年齢、評価等)は訴訟対象となりますし、職務がない場合の解雇(レイオフを含む)も金銭での解決が可能です。また、日本年金機構のHPによれば、アメリカには退職・遺族・障害保険制度(OASDI:Old-Age, Survivors, and Disability Insurance)があり67歳まで段階的に引き上げ中とのことです。一方、日本では期間の定めのない無期雇用(60歳定年)が多く、「社内での頑張り」評価での昇給・昇格、退職金制度、定年再雇用制度など、労働法で整理解雇の4要件が厳しく定められており、雇用契約終了の合意書締結などで実質的な人員整理を行うケースが多いです。

また、転職市場の活性化は労働力移動が容易に行えるようになった反面、終身雇用制度自体は残しながらもアメリカ型に近い職務別契約(ジョブ・ディスクリプション)などの選択肢を増やすことで職務内容と報酬を決めることが多くなりました。つまり、企業の職務要求水準に達していない場合には報酬減額もあり得るのです。その上、先述の年金受給年齢引き上げが進めば、70歳まで企業が従業員の面倒を見る必要があり、無駄な固定人件費とならないよう人員整理や人事制度の変更がなされてきています。