オフィス鴻

正社員の手当削減(判例)

2024年01月12日

令和2年10月15日、最高裁で改正労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止、同一労働・同一賃金)とパート・有期労働法8条(短時間労働者の待遇の原則)に関する重要な判決があったことを覚えているでしょうか。最高裁の判例(日本郵便事件)では、正社員と契約社員との間での賃金項目の相違は個々の労働条件を個別に考慮するという条件付きで各種手当を契約社員に認めないことは「不合理な格差にあたる」とした法理です。その後、日本郵便は正社員の有給休暇を1日減についてJP労組(約23万人)が定期大会で受け入れを承認して昨年10月から実施されています。

また、昨年5月には、改正労働契約法第20条(同一労働・同一賃金)への対応策として正社員の手当削減で図る手法は違法としていた訴訟で、山口地裁は請求棄却としました。これにより、格差解消に正社員手当の削減が容認する1つの司法判断がなされました。労働契約法第10条(就業規則の変更)については、合理性があれば労働者に不利な一方的な就業規則変更が例外的に認められること、パート・有期労働法8条(短時間労働者の待遇の原則)に基づき、総賃金原資から見た職員全体の不利益が小さいことから変更の必要性を認めたことになります。また、昨年7月には、最高裁が定年再雇用後の基本給減額について、基本給の構成要素に違いがあることを理由に名古屋高裁へと差し戻しとしました(名古屋タクシー事件)。

日本郵政グループなど正社員の手当を削減して待遇格差を解消する動向は他社にもありますが、全ての手当てが該当するかどうかは、相応に継続的な勤務が見込まれるか否かを1つの基準として個別に判断されるようです。そのため、待遇の差が不合理といえるか否かの判断はケースバイケースであり、法改正に伴う就業規則や契約書の改訂など企業側はその合理性を判断するために各種手当等の支給趣旨を明確に規定し直す必要があると思われます。