オフィス鴻

M&Aと社風

2023年04月03日

編集人は吸収合併型のM&Aを幾度も経験しました。DD(デューデリジェンス)では法務・財務・営業などの鑑定評価に加え、組織・人事には相当の時間と思慮を必要とします。そして、管理系業務をベースにしたシステム統廃合(ERPを含む)を始め、どのような「社風」を目指すのかが、JTC企業(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー、古い体質の大企業)の働く環境の変化・改善、従業員パフォーマンス向上・評価、業績の拡大を図るキーになると考えています。

また、吸収型M&Aでは相手方従業員・役員と自分たちの処遇・人事の比較にとても敏感です。特に組織改編では既存組織を併行的に温存しつつ、比較的小規模な人事交流や襷掛け的な人事異動が行われたりします。年功序列制人事制度下で定年・再雇用制度などの変更(不利益)を従業員の個別同意なしに行うことは労働契約法第9条・第10条に違反しますから、相手方との比較で人事・処遇に納得できない場合、社内で派閥的分裂が起こったり、有能な従業員のサイレント離職が増加するなどの副作用を伴うことにもなりかねません。時には戦略性・人材不足から、M&Aの果実が企業規模拡大(時にはカニバリゼーション縮小もある)・延命以外は成果が得られないケースもあります。

さいごに「社風」ですが、本社が率先して現業部門と一緒に進めることが新たな風を呼び込むきっかけとなります。編集人は現業部門(事業所等)訪問は、現場から「大名行列」と呼ばれるような態度で接したり、本社(経営)・他事業所等・従業員への不満を口にすることは絶対に慎んできました。よって、本社やM&Aが多い企業の管理部門の人選は、仮に組織変更であっても、経営者としての覚悟と選択眼が問われる重要マターだと思っています。