オフィス鴻

健保組合財政と新設申請

2023年10月22日

健康保険組合連合会の資料では、全国には約1,400の健康保険事業組合があり、全体では約1,300億円の黒字ですが、4割の組合が赤字で更に高齢者拠出金の増加により今後赤字幅が拡大する見込みだそうです。高齢者拠出金とは後期高齢者医療制度(多くは1割の自己負担)へ支援する拠出金を指します。簡単に言えば、公費で5割を負担し、さらに現役世代の健康保険料から4割を後期高齢者の医療費補填に廻す仕組みです。偶々かも知れませんが、新型コロナの流行時期にはこの拠出金が減ったそうで、高齢者が医療機関を受診するのを控えた結果のようです。見方によっては、高齢者の中に不要不急の受診をしているケースが多くあり、医療費増加に繋がっていたとも言えそうです。

医療業界での「2025年問題」とは、団塊世代(戦後の昭和22~24年生まれのベビーブームに産まれた方)の高齢化に起因する、他産業界や年金財政でも起こっている社会保障費増大問題の1つです。現役世代の人口が先細りする中で社会保障費増や物価上昇に見合うだけの可処分所得上昇がなければ破綻は明白でしょう。日本全体では過去最高の70兆円を超える税収があり企業収益も大幅に改善されてる中で、東京オリンピックや大阪万博では多額の追加費用が生じ、少子化対策と防衛力強化という大きな課題もあります。その観点からすると、自民党の選挙敗北のトラウマはありますが、企業にとっても社会保険料負担増より消費税引き上げの方が公平性を担保でき最も理に適っているように編集人は感じています。

一方で、スタートアップ業界で働く人のための健康保険組合「VCスタートアップ健康保険組合」の設立申請が検討されていて、比較的若年層の多い労働者のための業界独自の健保組合運営による労働環境改善を進める計画のようです。しかし、今30歳の方が高齢者になった時、日本の社会保障制度が大きく変わらない限り同じような課題が生じると思われます。