オフィス鴻

偽装フリーランス

2024年02月13日

昨年8月の朝日新聞に、労働基準監督署が委託元との業務委託契約を締結していた個人事業主を労働者と認定し、さらに業務中の交通事故に対して労災認定の判断を検討しているという記事がありました。過去、偽装請負・派遣が違法とされたケースはありますが、ついに労働基準監督署がUberやインボイス制度などと関連する分野に対して監督官庁間で連携しながら本気度を示したように思えます。元々、フリーランスは個人事業主として業務委託契約の下、自身の裁量で働くことができますが、委託元からの業務指示や労働法規で保護されていない面も多くあり、企業側も雇用調整と社会保険料等の会社負担がないことから、意図的に偽装を行っている企業・従業員も多いようです。

また、政府は本年秋をめどに、既に成立している「フリーランス・事業者間取引適正化法」の基準に従い、労働者災害補償保険法の改正で既存の25職種以外でも加入できる制度の検討を始めました。これにより、新たに270万人のフリーランスが月額数千円程度(保険料率は未定)で労災保険への任意加入が可能となる見込みです。意外と知られていないのが、労災年金を受け取ることができることで、厚生労働省のHPによれば、治療後に障害が残った場合に支給される障害補償年金・特別障害年金、治療開始後1年6ヶ月後でも治療が終わらない重度障害者に支給される傷病補償等年金・傷病特別年金、労働者が死亡した場合に遺族に支給される遺族補償等年金・遺族特別年金があり、個人事業主には安心感が増すことでしょう。

一方で、アマゾンなどでは大手業務下請け先から再委託を受けて配送業務を行う中小企業・個人事業主が多いのですが、再委託先を通さずにアマゾン側が提供する配送アプリによる指示が「偽装請負」に該当する可能性が高いと言われています。また再委託先が業務指示を出して適正な仲介手数料を得るビジネス体系でなければ、トイレや食事の時間も惜しんでも配達しきれないAI配車ソフトは、働き方の自由度に名を借りた搾取構造と言えるのかも知れませんね。