オフィス鴻

台湾有事とロジスティクス

2023年04月09日

日本が輸入しているエネルギーや食糧を運ぶルートには、インド洋~東南アジアを経由するシーレーンと呼ばれる海上輸送路があります。約30年前の湾岸戦争では、日本は多国籍軍に130億ドル(当時のレートで1兆8千億円)もの資金拠出しか行えず国際社会から小切手外交とも揶揄されました。当時は海外有事への法整備が整っておらず、翌年に国連平和維持活動へ参加できるPKO協力法が成立してアフリカや中東に自衛隊が派遣されるようになりました。現在は、ウクライナ紛争・イスラエル・パレスチナ紛争(共に戦争状態です)が起こっていますが、日本のすぐ傍でも中国が台湾を併合しようと様々な挑発が行われていて、日本の尖閣諸島への領海侵犯も相次いだため八重山諸島などに自衛隊が配備・増強されています。

また、台湾有事となれば日本の生命線であるシーレーンへの影響は避けられず、さらに中国の日本領土制圧ともなればその影響は戦争状態と予測されており、日本の安全保障のあり方が改めて問われています。これまで盤石と言われてきた日米安保同盟もアメリカの国内事情と国際社会での相対的弱体化が指摘される以外にも、国家間の戦争ではない地域紛争や宗教・宗派、民族間の対立、過激派活動の活発化が世界各地で発生しており、日本周辺での有事には日本人が自ら守ることは必須(世界の常識)のように感じます。

なお、「戦争のプロはロジスティクスを語り、戦争の素人は戦略を語る」という格言があるそうですが、仮に日本が輸入する食料・エネルギーの要であるシーレーン防衛・維持を行うともなれば、長距離の兵站(必要な物資の補給や整備・連絡、Military Logistics)とシーレーン周辺諸国との関係強化は不可欠でしょう。懸念すべきは、輸入途絶による食料・エネルギー安全保障抜きには最前線への補給が行われないことを意味していることで、編集人にはその重要性と日本の物流クライシス問題の根本的課題が重なって見えてしましますね。