民生機器の軍事利用
2024年12月03日
レバノンで発生した民生機器による爆発テロで、ポケベル(生産国不明)や日本製のトランシーバーが使用された可能性があると指摘されています。日本は軍事転用が可能な民生機器に対して輸出先を制限していますが、第三国経由での調達・経路追跡まで完全に把握するのは非常に難しいと言われています。このトランシーバーを製造していた日本企業では、既に10年前に販売が終了した後、アジアで同社製の模倣品が大量に流通したことを受け、本体用電池の生産を打ち切り、更にバッテリーの取り外しには偽造品防止用のホログラムシールを貼っていたそうです。そのため、現地での報道を受け自社製品が使われた可能性は極めて低いとのコメントを出しています。
軍事転用が可能な民生機器に対しては日本をはじめとした主要国で、テロ防止のため厳格な輸出管理をしていますが、以前はIS(イスラム国)が使用していた車両にトヨタが多かったことや、ロシアがウクライナ侵攻で使用したドローンに日本製の部品が使用される事態も実際に起こっています。今回の事案では、ブルガリア当局が自国内企業が中古品販売をテロ組織に仲介した疑いがあるとして捜査をは開始したほか、イスラエル企業がハンガリーで何らかの方法で高性能爆薬を組み込んだ台湾メーカーのポケベルを製造したとも報道されています。実際に正規代理店経由の販売であっても中古品の流通まで管理することは難しと思われます。
今回、日本メーカーはホログラムシールが爆発物から検出されず直接的な疑惑は晴れましたが、軍事転用できない仕様にするには契約書締結のみならず対策費・新機能開発費も多額となるうえに、更に新たな改造技術といたちごっこになる可能性が指摘されています。以前、韓国をホワイト国(日本政府が認めた安全保障上の輸出管理において優遇される国の通称で、現在はグループAの名称です)からグループBに指定替えした原因も、純度の非常に高いフッ化水素化合物が第三国で軍事利用される管理状態を懸念した措置とされています。