オフィス鴻

消費者志向とサブスク

2023年10月15日

アメリカ最大級の食肉オンライン業者であるButcherBox社は、2015年に開業してからわずか7年で売上が700億円を超えました。同社の特徴は、設備投資負担等を軽くするライトアセットメント手法を取り入れ、自社生産・加工は行わず専門業者から仕入れたものをサブスク方式とアソートする形で提供していることです。食材サブスクの同業他社が無料キャンペーン等で疲弊していく中で、出荷時の無料ベーコンサービス(ベーコン・フォー・サービス)と高品質の肉ででたくさんの新規顧客とリピーターを集め、数量より品質維持を最重点に置くことで、薄利多売とはいえども無理しない範囲でプロモーション戦略を着々と実行しているそうです。

現在は、発送に必要なドライアイス、サーモン販売、ペットフード事業も行っており、日本の食文化との違いはありますが、常に新しい商品を提供することで1回平均200ドル以上の受注を確保しているそうです。考えようでは、自社製品を使わないマーケティングビジネスモデルとして成功したのは、スタートアップ企業の投資に頼らなかったことで、自由なビジネスを展開できたからとも言えそうです。そこには、事業を始めた理由が自己免疫疾患(編集人と同じ類の病気)の妻のために抗生物質を使用していない牧草のみで飼育された牛肉を入手するためという強い意志があったからこそ、経営の自由度を確保したかったための経営スタイルとも言えそうです。

サブスク( subscription)とは、月・年単位で利用するコンテンツやサービスに応じた料金を定期的に支払って音楽・新聞・自動車・スポーツジムなどを利用するビジネスモデルですが、そこには消費者が所有するものを減らしたいというニーズが根底にあります。また、新規出店と新規顧客の獲得を繰り返す従来型ビジネスモデルが業績拡大に直結しない業態(限界点)を感じる事業者からすれば、利用頻度に関わらず(使用頻度の極端に低い顧客が退会しない限り)会員数に併せて設備投資しなくても利用・購買収入を固定的に得られる点では、まだまだビジネス拡大の余地があるように思います。