オフィス鴻

自然の恵みと五味

2023年08月12日

人間の味覚は、生理学的に基本味と呼ばれる甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5種類(五味)に分けられるそうです。日本列島には地域によって四季の移ろいがあり、例えば桜前線が徐々に北上するがごとく、天然の旬の食材も少しづつ産地が変わるなど、自然からの恵みに感謝しています。例えば、春の味覚の代表である山菜は、その苦みが毒を体内に持ち込まないための役割があると考えられています。編集人も山菜(特にコシアブラの天ぷらとお浸し)が大好きですが、食べすぎるとお腹を壊してしまします。この味覚の多様性こそが食用となる食材の選択肢(遺伝子や、味覚受容体も大切な要素だそうです)を拡げ、特に苦味(えぐみも含みます)は子供の頃は嫌いだった食材を使った料理も食せるようになったり、飲食店での隠し味的なアクセントとして使用されることも多いです。

また、和食には「春は苦味を盛れ」という言葉がありますが、日本料理の基本である出汁と共に、山菜には春が来たという躍動的な味覚を感じられることなども日本の郷土料理や伝統料理が豊かな証しだと思いますし、コーヒーやハーブ、チョコレートの苦みも色々な料理にアクセントを加えることができます。また、うるか(アユの内臓)、いしる(魚醤)、熟成肉(子供の頃は腐った肉と言われてました)などもかなり一般的になっており、新たな研究成果がいろいろと発表されていくことでしょう。

最後に「白なすカレー」についてお話ししたいと思います。白なすとはその名の通り皮が白いなすのことでヨーロッパでは一般的な食材で、日本では埼玉寄居や三浦半島のトロ茄子として知られていますが、収穫時期も短く生産量・流通量も少ないです。とろけるような食感と、ほんのりとした上品な甘みがあり、加熱調理することでその味わいをより楽しむことができるので、編集人の家ではカレーに入れて姿形がなくなるまで煮込んでから食します。上品なとろみのような食感と甘さがカレーの美味しさをより際立ててくれる食材です。