オフィス鴻

茶道と平和

2024年03月10日

日本経済新聞の特集記事「人生100年の羅針盤」に、茶道の裏千家前家元である千玄室氏(100歳)の平和に関するコメントが掲載されていました。同氏は茶道を通じた平和記念活動の原点は太平洋戦争(第二次世界大戦)での特攻隊経験にあると述べておられます。学徒動員で海軍航空隊に入隊したとき、一度出撃を拝命すれば二度と帰れない任務に赴く仲間に、心を和ませ、清めて、鎮めてもらいたいと簡易茶道具でお茶を点てて振舞われたそうです。その後終戦となり復員を果たしたものの、出撃した戦友たちの無念に苛まされたと言います。

茶道では、「いったん茶室に入れば互いに敬い、譲り合う精神」があり、人種・宗教・社会的格差はなく平和を実現するきっかけとして茶道が果たせる役割があるのだと考えられたそうです。その後、60カ国以上の海外を訪問した際には「茶道の丸い茶碗は地球で、緑のお茶は自然を象徴しています」と説明して、衝突しそうになる衝動から半歩下がって譲り合うことの大切さを伝えてこられたと言います。茶道においてお互いに異文化を尊重することで世界に通用する普遍的価値となるという言葉には、編集人は平和への使命感以上に哲学的な意味合いを感じざるを得ませんでした。

ウクライナ・ロシア、イスラエル・パレスチナ紛争(戦争)では多くの民間人が犠牲になっていると報道されており、その他地域・国家でも人命に関わる内紛・差別・権力闘争が多くあります。また、日本国内でもこれまでに類のないような犯罪行為が多発している今、お互いの考え方の違いや生き方への共生について日本人としての道徳観に立ち戻って考えることが重要に思えてきます。一つの例として2019年、アフガニスタン東部ジャラバードで武装組織に襲撃・殺害された中村医師が荒れ地に灌漑施設を作り緑の農地を作ったことで、現地の人々の日常生活や仕事の利便性を向上させたことに対して、多くの現地の人々が毎年追悼式を行っているそうです。今の私たちが親日国家と共存できるのも、このような精神を持った先人たちがいたからこそだと思います。