オフィス鴻

供給インフラ維持費用

2024年04月11日

日本経済新聞が実施した社長100人アンケートでは、物流コスト上昇への懸念が全業界における共通課題であり、サプライチェーン(供給網)の変更・共同配送・配送頻度の減少などこれまで少なからず行われてきたモノを運ぶための改善策に加えて、営業や生産部門をも巻き込んだ取り組みが必要である旨の回答が9割以上に上っていました。特に印象的だったのは、「運べない(車両が確保できない)=売上が立たない」「専門製品(医薬品)の輸送品質が保てる委託先が無い」「設備投資を含む自社内での(在庫)滞留時間の短縮」など経営の根幹に関わる影響度を図りかねている発言が多く、従来の発想(効率化)と異なる施策の検討が必要だとの認識はあるものの、半分以上の企業で製品価格への転嫁が検討されており、中小製造業やその他業種でも自社内でコスト上昇分を吸収することは難しだろうと思われます。

一方で、運賃値上げ幅についての荷主と運送事業者の考え方にまだ隔たりがあるようにも感じられました。荷主側がSCM全体での取り組みにより商流を含めたトータルコストと新たな商慣習への改善を全社ベースで強く意識しているのに対して、運送事業者側はこれまで荷主から「生かさず殺さず」の条件提示を受け入れ、原価構造を明らかにしてこなかった(交渉能力がなかった)ことで見せかけの値上げ・改善しか行えていなかった面が否めません。換言すれば、仕事を失うことを恐れるあまり荷主側と腹を割った話し合いへと発展できず本当の意味でのパートナーシップを築けてこなかったとも言えるでしょう。それでも倒産企業数は他業界(飲食業を除く)に比べて決して多くはないですから、値上げ分がドライバー不足を解消するほどの処遇改善には繋がらない可能性も想定されます。

編集人の専門分野である中間流通(SCM網)に荷主側が一歩踏み込んだことは、物流業界にとってこれまでにない大きな転換点です。しかし、運送事業者の法令違反が監督官庁から以前にも増して非常に多く指摘され始めており、荷主に一方的に責任転嫁することには違和感を感じます。