オフィス鴻

働き方改革と運送業界

2023年10月13日

運送2024年問題で欠かせないことの1つに、労働時間規制に関わらずドライバーが満足する給料水準を維持し、働きに応じて毎年物価上昇分以上の賃上げ原資(利益)を確保することは、経営者と配車担当者の能力と責任であるということが挙げられます。編集人も長年ドライバーの傾向を見てきましたが、先程の配車を含め事故やトラブルによる経営へのダメージが極めて少ない(逆説的には、満足度の低さが多くの事故・トラブルを発生させる)のは、給料への満足度・納得度が高い(仕事内容に見合っている)ドライバーだということです。そこには、昭和世代の仕事(運送)した分だけ稼ぎたい世代とは異なり、家族・介護・趣味などのワークライフバランスと処遇水準との比較を重要視する世代が社会の中心となってきていることにあると考えています。

国の施策では、免許制度改定(運送業から見れば改悪)、下請法に違反する荷主への勧告・社名公表などが進められていますが、最大の課題は届け出運賃に従った適正運賃の収受が競合他社との価格競争や荷主とのパワーバランス、発着顧客の附帯業務、多重下請け構造などにより、全く意味をなしていない点にあります。宅配や特積(いわゆる中小ロットの中長距離路線便)は国民生活に直結していて、物流クライシスとして料金値上げを消費者が結果的に負担する形となりましたが、その先では個人事業主への業務委託と言う形で働き方改革が形骸化して新たな長時間労働の温床となっているのです。更に楽天グループの三木谷氏が代表理事を務める新経済連盟は、商品価格と配送コストを別建て表示することに反対の姿勢を示しており、運送業界をパートナーとして見ておらず、いずれ商品を運ぶ協力業者の多くが送料無料(実際は数百円程度かかります)の事業者から離れていくように感じます。

現場では非常に複雑な管理能力が必要な変形労働時間制(事前に始業・就業時間を特定することが条件)を導入しても未払いや長時間労働を助長しており、ヤマト運輸などが敗訴しました。つまるところ、これから適正運賃を支払わない荷主と法規制を守らない運送事業者は自然淘汰されていくと考えています。