オフィス鴻

合理化と物流コスト

2024年06月04日

自社の物流合理化を勧めるにあたって、物流コスト改革は単なるコスト削減だと考える企業・部門は「物流2024年問題」から新たな考え方のヒントを得ることが難しくなります。その理由として、1990年の物流二法改正によって主に荷主サイドが主導した物流料金体系変更施策がデフレ経済下で歪んだ状態を産み出してから、約30年間を経て新たなステージへと移行し始めているからです。国土交通省自動車局のトラックGメン配置、公正取引委員会の下請法違反企業の社名公表、そして4月から始まった厚生労働省が中心となったトラックドライバーの総労働時間規制などが盛んに報道されるようになりましたが、最もリスクが高いことは自社の製品を顧客に届けることができなくなること、つまり製品を売ることが出来ないことでしょう。

また、これまで安値(赤字)受注競争をしてきた物流事業者側にも問題はありますが、最大のポイントは様々な社会インフラや生活スタイルの変化に対して荷主と物流事業者が一緒になって合理化策を話し合い、ともにコスト改善を進める努力を怠ってきたことのツケが多くの企業に見られることだと考えています。例えば同業種間の共同配送や復路貨物による積載率向上などは以前から行われていましたが、最近はコンビニと飲料メーカーの物流提携が始まりましたね。また、バラ積み(手積)貨物のパレット納品も増えてきましたから、高齢ドライバーや女性でも作業負担の少ない運送業務も増えてくることでしょう。

一方で、ドライバーの年収の低さが問題とされていますが、これも時間単価(中型トラックでフルタイム残業込で1,600~1,800円前後)で考えれば、拘束時間内に仕事をしていない時間(待機・附帯業務等)の多さや給料稼ぎのための残業が生活給となっている現状を鑑みる必要があります。今後IT技術等の進歩で様々な合理化が進められる環境が整いつつある中で、これまで以上にドライバーに求められる資質と荷主責任を定義しなおすことが「物流クライシス」を軟着陸させることになると想像しています。