オフィス鴻

国土交通省の目算

2023年08月25日

来年4月から運送2024年問題の1つであるトラックドライバー時間外労働時間の年間上限が960時間(その他にも告示や運用方法変更などがありますが割愛します)になります。編集人のところにも、日本国内に限らず海外企業やコンサルティングファームからたくさんの質問が寄せられており、可能な範囲でお答えしています。その内容のうち主なものは各社の対応状況と事業に関連するリスクヘッジ(料金、トラック確保など)に係るものですが、この問題について誤った認識と多くの誤解が拡がっていることも事実です。

ブログでもこの話題を取り上げてきましたが、燃料サーチャージ制度導入が進んだ15年ほど前よりもマスコミ等で取り上げられている今が、ここ30年間の中で荷主に最も料金値上げ交渉を実施しやすい環境にあります。ちなみに宅配クライシス問題では宅配・路線便の料金値上げ、再配達の非効率解消(直置き)、到着所用日数の増加などが世論の追い風を味方にして進みました。一方で全体の50%以上を占める生活必需品配送ドライバーに対しては、災害時以外はマスコミは注目していません。適正賃金とは、中間流通での非効率解消と、サービスの有償化・適正料金の収受であることはこれまでもお伝えした通りです。そこに運転免許制度の改定が度々あり、国土交通省の一部施策もこの問題をより複雑にしています。

ドライバー賃金体系(安い基本給・諸手当+時間外労働)の再構成は、原価計算・営業交渉などと同じで企業経営者の責任です。そして、適正収益交渉(値上げ)と、残業稼ぎに勤しみ既得権益にしがみつく質の悪いドライバーの駆逐・排除を愚直に進める覚悟があれば、国の政策(特に公正取引委員会による下請法違反事業者13社の社名公表)と国土交通省の動き(トラックGメン)に連動した形でこの問題解決の本質が見えてくる訳で、正しい施策と理念を持った企業ではドライバーの賃金上昇や人手不足緩和が進むと考えています。結果的に経営レベルの低い運送会社は淘汰されますが、過当競争から品質重視の競争になることは業界全体の地位向上に繋がるでしょう。