オフィス鴻

引き算の運送事業経営

2024年04月12日

一般貨物運送事業の許可には、荷主(取引先)との運送委受託契約書と運賃届出書が必須項目として含まれています。運転資金調達以外にも、安全性を担保するための車両・設備・人材・運行三費などの運賃(殆どが各トラック協会の距離制・時間制運賃表を使用)としていますが、自由競争の名目で過剰な安値受注に走る事業者も少なくありません。中には、経験に基づく料金で見積書を作成する事業者も多く、適正運賃を提示する基となる原価計算が正確にはできない管理者・配車担当者に事業所運営を任せることも少なくありません。

そのような事業者では、予実算管理の面で評価に繋がりやすい売上(収入)と利益にのみ目が行きがちで、本当に必要な経費について荷主から計算根拠の提示を求められたとき、合理的かつ論理的説明に曖昧さや矛盾が生じることがあります。車両費(リース料・税金)、施設費(事務所・駐車場)などは固定費に、燃料費は車種・ドライバー・積載重量によって変わりますので準変動費に分類して配賦すれば営業利益に大きな誤差は生じません。問題は、人件費とドライバー別生産性のうち、固定費相当部分とそれ以外をどのように算出・説明するかにあるでしょう。実車率・稼働率についても同じことが言えます。ただし、同じ仕事でもドライバーによって経費(特に時間外勤務、通行料)が異なることについては、荷主側の責任ではないので値上げの口実に使うことは荷主にとって否定材料以外の何物でもありません。

また、本社管理費の配賦も事業所では詳細を含めてアンコントローラブルであり、原則的に営業利益額(率ではない)で事業所業績を公平に評価する必要性があります。そのような観点からすると営業利益を増やす方法は、ルート便・貸切便等では料金値上げ・経費削減、運行単位業務では実車率と回転率を上げることがメインになります。そのため、引き算の収支管理に慣れてしまうと、生産性の高い(時間外や通行料が少ない)ドライバーに対して無理な運行計画を組んだり、給料額が少なくなったりすれば、仕事のできるドライバーほどフラストレーションのトリガーが多く、離職する可能性が高まるのです。