オフィス鴻

港湾カレッジ

2024年06月07日

港湾作業における物流のスペシャリストを育成する厚生労働省所管の「港湾カレッジ(港湾職業能力開発短期大学校)」が横浜と神戸にあります。卒業生の正社員就業率は100%、求人倍率は13倍とまさに引く手あまたといったところでしょうか。昭和47年に開校して2年制の港湾・物流を円滑に進めるためのハード・ソフト作りキャリクラムを経て即戦力を養成する機関ですが、事業主が雇用する従業員の方々を推薦する入校試験制度も設けられており、中小企業等の人材育成の支援も行っているそうです。

物流クライシスでは、運送・倉庫事業のみならず船舶輸送・港湾事業でも人手不足は顕著でありますが、法律上の規制業種のため様々な既得権益がある業界としても知られています。特に横浜港に限らず神戸港や東京港も韓国釜山港やシンガポール港にアジア地域でのハブ機能面(乗り継ぎ中継点)で追い抜かれてしまいましたが、航空業界とのシナジーで地理的に那覇空港をハブ化する動きもあります。なぜ日本の港湾取扱貨物量が大きく減少しているのかと言えば、1つ目は巨大コンテナ船に対応できる「深さ」を備えた港湾がないこと、2つ目は入港料や荷下ろし費用といったコストの相対的高さにあることが原因で国際的な競争力に劣るからだと言われており、将来的に抜本的な改革を進めなければ基幹航路ネットワークから外れることになりかねないでしょう。

そこで国際物流網から取り残されないためには早急なインフラ整備は当然として、コストに限らずリードタイムの改善・行政手続の電子化・海外システムとの連携などが課題として挙げられています。また、地政学的にも昨今の南シナ海での中国の動きに対するシーレーン防衛、中東地域(紅海)ではシージャックが多発しているスエズ運河ルート(最近は喜望峰ルートも使われているようです)の安全確保対策など国際的な協調関係の重要性が高まっています。日本では、戦後の高度成長期に整備された各種公共インフラの老朽化対策を後回しに似てきたことで、物流インフラ整備は待ったなしの状況と言えるでしょう。