オフィス鴻

物流クライシス㊤

2024年01月13日

昨年10月の日本経済新聞1面に表題の記事「2024年問題」が掲載されました。副題として「14万人不足」「10兆円の損失」「コスト優先の30年」とあり、物流事業に関わってきた者からすれば当たり前の内容ですが、社会インフラ・経済の血液ともいえる物流事業の課題が取り上げられたことはこれまで殆どなかったことを鑑みれば、社会での課題共有が少しでも進みつつあることは良いことだと考えます。また、関係者の方々にとってはこれからが本番ですので、4月からの法施行にむけて準備の真っ最中かと思われます。

この記事では、トヨタが一次取引先(いわゆる元請け運送事業者)20~30社に対して、ドライバーの残業減少に伴う年収減少と離職とを防ぐために値上げをするとありました。ただし、二次下請け以下にどの程度運賃として反映されるのかは不明です。特に、取り上げられた施策の中でJIT(ジャストインタイム方式)からミルクラン方式(複数の下請けメーカーからの集荷)への変更を一部で導入するとあったことは、物流現場(特に運送)がいかに荷主都合で低積載率運行(概ね40%程度と言われています)を強いられてきたことの裏返しであり、中間流通全体の最適化を荷主(サプライヤー)都合で阻害してきた面があることを一部認めたと内容です。つまり、サプライチェーン戦略の中でも中長期的な物流戦略の視点が欠けており、現在のドライバー不足状況の原因の1つに対して、日本を代表するトヨタが改善に乗り出した点は遅ればせながらでも評価されることだと感じます。

一方で、物流二法施行(1990年)による運送業界側の過剰値引き競争と多重下請け構造(中抜き)への警鐘は度々されてきましたが、当面は企業戦略の中に優良なトラック事業者確保が事業継承の最優先課題の1つとなると感じます。そして、物流事業者は運送事業だけでなく倉庫事業の効率化・人手不足とも向き合う必要があり、各業界でも原料高騰のあおりを受けて殆どの生活必需品が値上げされる中で、優良な物流事業者(運送事業者)の選別が行われるチャンスであることも容易に想像できます。