オフィス鴻

物流事業の社会的解決課題

2023年08月24日

このブログを始めてからほどなく、複数のシンクタンクやコンサルタントファーム、実事業者等から編集人宛に依頼や問い合わせの多かった物流事業・運送事業についてコメントしたいと思います。特に多かったのは、「運送2024年問題の本質と受委託両者の進捗状況」「人手不足の解決方法」で、直接または可能な範囲でこのブログにて意見や見解をお伝えしてきました。

運送事業に関して言えば、293改善告示(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」)により課題解決が先送りされていたこと、小売業者(リテーラー)がECの台頭で中間流通全体で俯瞰する視点に欠け物流事業者にそのしわ寄せ(例えば送料無料、時間指定など)を背負わせたこと、大手事業者が中小運送事業者の運賃値引き(過当競争)につながる、契約書外取引や契約更改交渉機会のないことが常態化していることが課題と考えています。また、人手不足は「魅力のない企業には、良質でレベルの高い従業員は定着しない」と言うことに尽きるでしょう。処遇の魅力、仕事内容の魅力、人間関係の魅力、将来性への魅力などは従業員にとってその企業の文化・風土の評価指標となり、従業員満足度が低ければ次の企業への労働力移動が必然的に発生しているのだと考えています。

正直なところ、30年近くのデフレに近い物価安定が物流事業を含む業界全体の収益性・生産性の改善を下支えした大きな要因であり、その矛盾が既に露呈していたものの、一部の企業以外では本気で取り組んでこなかったところに日本の社会構造に起因する様々な社会的課題が存在しているのだと思います。今後、IT化やAIでは解決できない領域に挑戦していく企業が生き残り、その原動力となる経営資源の1つである人材育成を怠れば、近い将来に市場からの退場を迫られるのではないかと推測しています。