オフィス鴻

物流危機の本質

2024年01月03日

アメリカやヨーロッパの大手小売業では、日本と異なる商慣習が大きく2点あります。1つ目はサービスに応じた納入価格設定(メニュープライシング)の採用、2つ目は持続可能な物流体制構築を国が中心となって適切な法整備を進め、特定業界との利権構造に過度に依存してこなかったことが挙げられます。もちろん、日本の国土構造、人口(商圏)分布、消費者性向など、一概に他国と比較するのは適当ではないのですが、相対的に日本国民の中で所得格差と利他の心が失われた結果が現在の日本の現状を表しているように思います。

編集人は学問の専門家ではありませんが、実業のプロとして現場目線と経営目線を併せ持ちながら約40年仕事をしてきました。一時期、海外にいた時は日本の商慣習が異常に思えるほどの衝撃を受けたものです。そして日本では当たり前だと思っていたことが、実際には全く理に適っていないことがたくさんあり、現在の大手小売業の業績不振も結局は当然の帰結だと思っています。また、ドライバー不足による物流危機が盛んに騒がれていますが、最も典型的なのはドーリー納品(荷台本体の下に車輪を取り付けた、台車・搬送機器のこと)に返品商品が載せられて返却されていること、パレットを使用した一貫パレチゼーション輸送が殆ど行われておらず、未だに手積・手卸・棚入れが中間流通で常態化していることが最大の問題だと認識しています。

もちろん、日用品(コモデティ)を扱うP&G、花王、ライオン、その他大手メーカーでは、20年程前から日本規格のパレットサイズT-11型(1,100×1,100)に合わせた商品設計・開発により、積載効率向上・手作業の軽減・積込納品時間の短縮を図っていましたが、それも工場(港湾輸入を含む)~中間拠点(卸売り)までの話で、小売業(最終納品先)の要望する納品形態で折角の効率化がかえって作業の無駄を生む要因の大きな一因であったことは否定できません。グローバル化が進む中で名ばかりの効率化により取り残された結果が、現在のドライバー不足を更に助長していると感じています。