オフィス鴻

物流施設とREIT

2023年11月18日

仕事柄、物流施設の土地確保・開発工事・設計仕様などにも携わってきました。ここ十数年前から投資家の目がREIT(Real Estate Investment Trust;不動産投資信託)が物流不動産に向くようになり、日本国債の利回りがほぼ0%台で国内外の余剰資金がEC物流ブームにあわせる形で、比較的長期間の安定賃貸収入と利回りが得られる物流施設資産流動化(ノンアセット型)が条件付で可能になりました。日本の国内法に準じたJ-REITでは、オフィスビル・商業施設・物流施設・ホテル等を対象としたREITが主流ですが、契約先との交渉も原則5年程度の定期借家契約が主流で、特に3PL、4PLと言われる受託形態ではマテハン・システムなどの初期投資がかさむため、法定償却年数と他施設料金との見合いで、再度複数年の定期借家を締結することが多いです。

しかし、物流施設用地の選定段階では、広さ・地型(1万坪以上)、倉庫要員の確保、高速を含む幹線道路、建築基準法(建蔽率など)、所管行政の条例(市街化調整区域など)などがあり、首都圏では既に適した場所には多くの物流施設が建設され尽くされている感があります。これまでだったら、大手デベロッパーが開発した物件であれば、開発前にテナントが決まっていることが多かったのですが、令和になってからフリーレント(3~6ヶ月程度)などの実質的値引きが新規物件でも行われるくらい、入居者確保が難しい物件が増加している印象があります。

最近、圏央道周辺地域や物流業者が手を出さない都心に近い歪な地形や小型の物件開発も増えているようで、最も重要な入出庫導線・労働力・トラック確保などを考えれば、IT化できる作業範囲は限られます。詳細スキームはここでは書けませんが、ベテランの企業物流担当者(センター長クラス)でさえこのほかにも様々な倉庫運営方法に係る能力がなければ、開設当初から順調に稼働しないことは嫌と言うほど身に染みついていますから、消費人口が減少していく中で物流施設の需要供給バランスが崩れる可能性も今後あり得るでしょう。