オフィス鴻

自動物流道路構想

2024年06月04日

国土交通省が開催した「自動物流道路に関する検討会」では、物流クライシスや温暖効果ガス削減などに対して主要都市間の貨物運搬専用インフラ(おそらく高速道路にある未利用空間等の利用が主流かと思われます)を構築することをベースに10年程度で実用化に目途をつけたいと考えているようです。ここでもドライバー不足対策を中心とした2024年問題が議論の焦点の1つになると予測されますが、戦後の交通インフラ等が60年以上経過して激しく劣化している上に電柱の地中化もあまり進んでいないような現状では、途方もない税金が投入されることになりかねません。

また、多くのドライバーが望んでいるのは長時間勤務の解消や荷役・待機等の減少よりも、生活給の底上げでしょう。自動物流構想自体は非常に良いアイデアだとは思いますが、戦後からパレット規格の統一も進んでおらず、商慣習に起因する問題点や現状を知っている物流関係者の視点ではまだ優先順位をつけてやるべきことが多すぎると感じます。その他にも、タクシー業界のようにアプリ配車が普及したことで多くの人材が入れ替わっても若い労働力が増えている現状を見れば、トラック業界団体が「送料無料」表記に疑問を呈することより先に、これまでの無作為を素直に反省して行政の力を借りずともできること(例えば運賃交渉、労働条件など)はまだまだたくさんあるでしょう。

そのような視点では、トラック業界が抱える問題を解決していくための共通プラットフォームを作ることの方が費用的にも遥かに安価であり、収益性向上や行政効率化の面でも十分に効果が見込めると考えています。特にJIT(ジャストインタイム)方式がネックの1つとなっていることは乗用・貨物自動車製造会社も認めており、利便性向上を求める消費者行動を変化させる「置き配」「宅配ボックス」「リードタイム延長」「賞味期限前返品ルール改定」などが認知されることで、当たり前に思っていた社会インフラの維持について社会全体でのコンセンサスが得られる土壌ができるのだと考えています。