オフィス鴻

運送事業健全化(1)

2023年11月25日

各地の自治体が運送2024年問題について意見交換の場を設け、「荷積・荷卸待機時間」「パレタイズ共通化」「適正運賃の収受」「繁閑の標準化」「時間指定」「配送回数の減少」「デジタコ活用型DXの導入」などを議論していますが、30年以上前から問題提起されている内容と殆ど変わりません。

この2024年問題の本質的課題は、「賃金増加の原資となる適正運賃収受」「時間・歩合ベースの給与体系から脱却した処遇改善」「正確な原価把握に基づく料金交渉能力」という視点での具体策に乏しいことが挙げられます。また、優越的地位乱用により社名公表された13事業者の中には、他社の手本となるべきホワイト物流推進運動への参加者(第1回目は約500社)も含まれており、未だに業界・荷主の体質が変えられない行政(国土交通省)にも責任の一端はあるでしょう。例えば、サービスエリアで割引開始時間まで多数のトラックが待機する高速料金の深夜割引制度改定も、民間会社のNEXCOに責任を押し付けるのではなく、国土交通省が主体となって具体策を詰めて、そこに各業界の知恵を結集させる施策を進めることが解決の糸口だと考えます。

一方、日用品業界ではプラネットの商品の受発注システムをベースに検品作業を無くす合従連衡の動きがでてきましたが、これも20年以上前にプラネット創設時から議論されていたことです。今回は、大手運送事業者がメインのBtoB物流の話であり、自社の物流網が壊滅的打撃を受ける前に業界として改善策の1つ(恐らく卸売業の集約化)が打ち出された形です。宅配事業者の下請けとして働く軽貨物自営業者(業務委託)は、一時的にせよインボイス制度や料金改定等の影響を直接受ける可能性もあり、依然として宅配クライシスが目前に迫っている現実から目を背けるべきではないでしょう。なお、ドライバーの年収改善・人手不足解消は、努力した運送会社では正常化の方向にあると感じますが、縦割り行政の弊害をどう乗り越えられるかが大きな壁だと考えています。