オフィス鴻

運送2024年問題(5)

2023年02月08日

運送業と良く似た収益構造業種(設備投資型・サービス対価型産業)に宿泊業(主に首都圏のホテル)があります。コロナ禍による出張控え・従業員離職等が客室稼働率低下の一因となりましたが、特筆すべきは、主にハイクラスホテル(ざっくり1泊1人5万円以上と定義)では、稼働率重視から脱却してサービス単価重視(客室・有料付帯サービスなど)への転換を成功させていることです。これまで多くの宿泊業は70~75%程度の客室稼働率がBEP(損益分岐点)であり、特に中小独立系のホテルではネットサイトでの客室安売りなどが頻繁に実施され、中小運送事業者の安値受注に良く似ていました。

これからの運送事業は、稼働時間短縮(荷積・荷卸待機等を含む)と休息時間確保、および有給休暇取得を含めた年間稼働日数の減少、並びに時間外勤務60時間超の割増賃金支払いが必要で、独自の乗務シフト作成ノウハウ蓄積が非常に重要です。また、リファレル型(従業員による紹介入社)と違い、免許証さえあれば転々と勤務先を渡り歩き、労働基準署への通報や未払い残業請求する集団があるなど、管理者が就業規則、賃金規程等を十分理解していないと、大きな労務問題を抱えることにもなります。

適切な運賃収受(荷主と直接取引、不採算取引からの撤退)を進めない限り、多重下請け構造(中抜き)による安値受注が残されたままでは、運転手不足の解消はおろか、2030年頃には生鮮食品(長距離)を中心に30%以上の貨物が運べない事態が起こると国土交通省は予測しています。多くのコンビニやスーパーでは1日3便の日配品配送体制ですが、既に2便にするなどの変更が始まっています。いままでと同じ運送事業者への業務委託契約では、店頭に並べる商品が届かない日が到来するのもそう遠くない気がしています。