オフィス鴻

郵便料金の値上げ

2024年06月03日

かつてヤマト運輸と信書関連配送業務で対立していた日本郵便ですが、昨年業務提携(メール便・薄型荷物の業務委託)を発表して競合関係から協業関係へと戦略の転換に踏み切りました。総務省の資料では、2000年度には250億通あった郵便物数ですが、2022年度には150億通まで減少しており、今後も減少が見込まれているとして本年秋頃には総務省情報通信行政・郵便行政審議会への諮問、省令改正を経て郵便料金の値上げに踏み切るようです。その理由はメールやSNS等の普及、企業の経費削減・電子帳簿保管法の施行、人件費・紙代・燃料費の上昇、そして何より最大の収益源であった年賀状(2003年;約45億通)が2022年には14億通まで減少したことが大きく影響していること、EC市場・ネット通販の市場拡大に適切な戦略が奏功しなかったことなどが挙げられます。

具体的には、定型封書(25g以下)が84円から110円に、はがきが63円から85円に、定形外郵便物・レターパックは30%程度の値上げとする案で調整が進められています。これは郵便法第3条(郵便に関する料金)の適正原価・適正利潤の定めに基づくもので昨年は書留・内容証明・国際郵便・ゆうパックの料金値上げを行っていますが、その他にも土曜日配達の中止など利用者側から見ても全体的なサービス劣化が進み郵便事業の凋落ぶりは他事業者と比べて鮮明に見て取れます。特に全国一律料金である郵便物配送は配達日数を1日程度長くしましたが、郵便法第4条(事業の独占)等により全国津々浦々までの配達が義務付けられているため、地方では効率性が極めて低い地域が多く存在することも事実です。

また、郵政民営化以前の特定郵便局(郵政民営化により廃止)は明治時代に全国に郵便制度を浸透させるため、地域の名士や大地主に土地と建物を無償で提供させていた経緯から特定関係者への世襲制(一種の利権)に対する批判もありますが、現在でも任意団体として全国特定郵便局長会が存在しています。