オフィス鴻

高速貨客混載輸送

2024年06月07日

以前、JR東日本が新幹線の空きスペースを活用して朝採れ海産物を首都圏の飲食店等に届けるビジネス実証実験を始めたことを紹介しました。その後、新幹線を利用した貨物輸送「はこビュン」として事業化すると発表され、海産物以外の商品(青果・医療用品等)も対象となるようです。また、本年からJR東海も同様の実証実験を開始しており、新幹線の定時運行技術とスピードを兼ね備えた新たな物流が始まったと言えるでしょう。同じようにANAは比較的利用者の少ない日中帯地方定期便を活用して、運送2024年問題の1つである長距離輸送日数が1日延びる課題に対して、翌日配送が可能となるEC物流向けサービスを4月より開始しています。

また、鉄道事業では運転士(車両別の動力車操縦者免許)不足から一部の通勤電車等では車掌が乗務しない路線も増えてきました。一方で、運転士に課される責任は重くなりつつあるようですが、更にJR東日本が主要路線である山手線での自動運転開始を模索するなど、大きな変革期にあると考えられます。また、首都圏を中心にリモート勤務が増え、固定売上・利益が見込めた通勤定期券購入者の減少により日中・早朝・深夜など比較的乗客が少ない時間帯でダイヤ編成変更(減便)も現実に行われています。ここに新たに航空業界が参戦してきた訳ですが、公共輸送・貨物輸送の垣根を超えた取り組みと新たなビジネス開拓により物流クライシスの一部が改善されることは、政府の施策が現場の実態とかみ合っていないように感じます。

なお、国土交通省では地域関係者による協議が調うことを条件として附した形で、人口3万人に満たない過疎地域以外のエリアでも2024年から全国の乗合いバス・貸切バス事業者、タクシー事業者、トラック事業者による貨客混載を認めることになりました。ただ、ライドシェアでは利便性・ダイナミックプライシングだけでなく安全性も十分に検討された結果とはいえ、採算が見合わないならば参入者は極めて限定的となる可能性が高いと思われます。