オフィス鴻

個人経営飲食店の淘汰

2023年12月07日

帝国データバンクの調査で、飲食業態の中でも特に個人経営の焼き肉店の倒産件数が増加しているようです。コロナ禍でも3蜜回避に適した換気設備導入や1人でも食事できる店舗の増加、大手外食業界が積極的に業態転換を図っているといった要因はあるものの、元々初期投資費用の大きさと仕入れルートの確保、肉の処理方法や保存技術など、専門性の高い業態であり、美味しいと評判の店には行列が絶えないことも珍しくはありませんでした。最近は、熟成肉や見栄えのする新たな焼き肉の楽しみ方ができる店舗が誕生したり、希少部位(ざぶとん、いちぼ、みずじなど)も街中の居酒屋などでも見かけるようになりました。つまり、それだけ競合が参入する余地があるほど、既存の焼き肉店が従来からのメニューから進歩してこなかったのかも知れません。

現実問題として、牛肉価格や燃料費等の高騰(円安や飼料高)、デフレの影響、人手不足などに加えて、安定した仕入流通と価格設定に柔軟性のある大手外食チェーン(食材の共有化、他メニューとのカテゴリーミックスなど)の進出が既存の個人店の廃業に拍車をかけたとも言えそうです。同じように、寿司業態も数年前から個人経営店の廃業・倒産が増加していますが、ミシュランに掲載されるような独立系の客単価の高い高級寿司店(1人2~3万円以上)は予約が取れないほど人気であったり、回転すしチェーンは平日の閑散時間帯に女子高生向けのデザートやうどんなど寿司以外の商品を提供することで日商(売上)を伸ばしているそうです。また、1千円を優に超えるこだわりを前面に出したラーメン店も多くなりました。

最終的には、価格面と利便性、利用目的による総合評価で客層やリピート有無が判断される訳ですが、街中のごく一般的な中華料理店、そば店、居酒屋などでも商売が続けられるのは、メニュー以外でも心地よい接客サービスや、あと1品の注文(例えば、ラストオーダーをラストチャンスと言い換える居酒屋など)の獲得で客単価と利益率を上げるなど、まだまだ個人経営店へのニーズを掘り起こしていく機会やアイデアは沢山あると感じています。