オフィス鴻

公立学校での給食事業

2024年05月25日

昨年、日本全国で給食事業を展開していた大手食堂運営会社が破産手続きを行いました。同社では食材価格や人件費・光熱費など物価上昇が続く中で、価格改定が進まず事業継続が困難になったことが原因だと言いますが、コロナ禍を経て大手飲食チェーン・弁当宅配事業者などが給食事業へ参入することで、地場給食事業者間の競争も激化しているようです。また、学校や官公庁などの入札事業では採算割れ受注・価格競争に陥りやすいこと、契約期間中の価格改定に関する取り決めが無されておらず、価格転嫁できない事業者の業績悪化を招いているようです。特にセントラルキッチンで調理した給食は自治体等の指定(随意入札もあります)したトラックで運ばれますが、そのトラックを他業務に転用できない契約先もあり、最終的には適正な原価計算や原材料費等の高騰に対するリスクヘッジが30年にも及ぶデフレ経済下で契約に反映されていなかったことが大きく影響しているようです。

文部科学省の学校給食費調査(2020年)では1食当たりの給食原価は小学校で224円、中学校で256円、これを一般的な飲食業の原価に当てはめると7~800円といったところでしょう。また、編集人が子供の頃は毎月給食袋に当月分の料金(現金)を入れて教師に渡していましたが、1年に数度給食袋の盗難がありました。最近は、朝食を食べていないなどの子どもの食生活改善(1日の食事は給食だけの家庭など)といった面から行政が給食費を肩代わり支給する家庭があったり、地場産物や国産食材の活用を含め国・自治体からの補助金が出ているようです。これらの給食事業は食育基準法や食育推進基準計画に基づいて推進されていますが、原価割れで入札した事業者が最近の諸物価高騰により経営状態が悪くなるのはある意味当然のことでしょう。

編集人が居住する行政地域(政令指定都市)でも、公立小・中学校給食の実施および無償化を公約の1つとした首長が選ばれました。今後中学校給食が実現すれば、子育て世代を中心に早朝からのお弁当作りが不要になり、短時間労働市場の選択肢も拡がる可能性があると思われます。