オフィス鴻

飲食業界の離職問題

2023年11月09日

コロナ禍のダメージから回復途上の外食業界で、「人材教育」「労働環境の改善」「組織の変革」を見ると経営健全化への本気度が伝わってきます。言い方を変えると、従業員を「単なる安い単純労働力」とみるのか、従業員から「将来における労働から得られる価値を得られる職場」とみられるのかで、今後も従業員不足問題が続き衰退していく企業と、経営基盤が強化される企業とに2分化されるトリガーとも言えます。また、時給2千円以上でも飲食・宿泊・サービス業で労働力が確保できない企業の特徴として、コロナ禍で解雇された企業には労働者は戻ってこず、新たな職場へと移動するということです。

また、ゼロゼロ融資の返済が始まっている中で、財務省幹部談として「ゾンビ企業(倒産予備軍)の多さが尋常ではなく、日本政策金融公庫による看過できない虚偽や決算書の未確認などの杜撰な融資実態が判明した」と伝え聞きました。その原因となる元々存続し得なかった企業への延命的な融資(大量の事務処理殺到にくむべき事情はあります)が、さらに労働力不足、物価高、円安なども相まって業績不振や倒産に陥ることは当然の帰結ともいえるでしょう。そして、最終的な回収不能分は税金等として当然に国民が負担するわけです。

つまり、人材が確保できなければ労働集約型産業での売上増加は商品単価・客単価の値上げ以外になく、その値上げ分を消費者が納得するサービス提供によって得られているのかが最終的に企業の利益を左右します。新型コロナが5類に変更されて以降、人手不足により客室稼働率がBEP(損益分岐点)といわれる70%を切っても経営を継続するには、宿泊料金を2~3倍に値上げ(一部は便乗値上げ)しなければならないでしょう。しかし、一般的な飲食業で従来と同じメニューに2倍の価格設定をすれば閑古鳥が鳴くだけで、賃上げ以外にも福利厚生、シフトの柔軟さ、シニア活用、経費削減などアイデアを具現化できた企業だけが生き残るのは真の競争社会の姿ではないのでしょうか。