オフィス鴻

優越的地位の乱用(食品)

2025年08月20日

今年5月公正取引委員会が大手スーパーなどで食品流通における長年の商慣行(3分の1ルール)について、実態調査により独占禁止法違反に該当する可能性があるとのコメントを出しました。この3分の1ルールとは、食品製造において製造日から賞味期限までの残期間を示しており仮にその期間が60日であれば製造から20日以内の商品を納入させるものです。さらに同40日を超えた商品は大手スーパーから強制的に返品する商慣行を指しています。この問題は予てから小売業で日常的に行われていますが、メーカー・中間流通事業者が殆どの費用を負担する仕組みであることを問題視していると思われます。

この商慣行は食品だけでなく日用雑貨・化粧品等でも行われており、返品費用・廃棄費用を負担せざるを得ない取引関係自体が問題です。もう1点は消費者行動にも関連しているのですが、まだ品質保持期限が多く残っているにも関わらず新しいものをシェルフ(小売店の商品棚)の奥から取り出すといった消費者心理です。最近は賞味期限切れ商品を格安で仕入れて消費者に安く直販する店もあるのですが、殆どが上記の商慣行から小規模メーカーに限られています。その理由は大手メーカー・中間流通事業者では販売機会損失に繋がることや、商品ロットナンバーで出所を確定される可能性があるからです。

もう1つの視点はSDG’sへの配慮不足が挙げられます。食料自給率が30%台の日本で食品ロスを防ぐ観点では「買い手の論理」と「売り手の論理」が一方的な力関係によって強制させられている現状を改善する気が小売業側には無かったとも考えられます。編集人は日本で有名な中間流通シンクタンクの会合に出席したことがありますが、そこでさえこの話題がタブー視されていました。最近はDX導入が進んではいても結局は資本主義下での自由競争の名のもとに消費者に高い商品を買わせる企業姿勢があり、今回の公正取引委員会のコメントは非常に闇が深い問題に目を向けたと評価しています。