オフィス鴻

約束手形の終了

2024年11月06日

日本経済新聞の記事からの引用ですが、日本のメガバンク3行(みずほ・三井住友・三菱UFJ)が2025年9月に当座預金口座の手形・小切手台帳発行を中止、中小企業の金融取引を電子決済へと移行することを正式決定したそうです。地銀や信用金庫、信用組合なども追従する方向で、手元資金の少ない発注企業の資金繰りを支えてきた約束手形による取引商慣習の1つが終了することになります。実際には、約5万社、年間2,500万枚に上る手形・小切手の決済が2026年9月末日付けで全て終了することになりますが、その後はインターネットバンキングや第三者への譲渡や担保が可能な電子記録債権へと移行させていく予定だそうです。

編集人は手形取引に直接関与したことはありませんが、与信不安のある企業に対しては約束手形から第三者対抗要件を満たす債権譲渡登記へと移行させたことがあります。昨今のブロックチェーンを活用すれば電子商取引でもより安全性を担保できますし、ファクタリングなど資金調達方法の多様化により明治時代以降続いた紙媒体での決済が事実上なくなることは自然の流れでしょう。また法律は異なりますが、2020年の民法第465条が改正され、連帯保証人の責任の範囲が広く過度な負担を生じさせていることから、連帯保証人の責任を限定する(極度額を定める)流れとも関連しているように思われます。しかし、手形決済やファクタリングでは入金期日(返済日)までの期間分の手数料(利息)を支払えば、急な資金繰りにも対応できていたことを鑑みると、これを機に電子記録債権が普及していくものと考えられます。

これまでは、手形の裏書(裏面に記名(自社名のゴム印で可)または署名と、届出印の捺印)で簡単に第三者へと裏書譲渡(手形裏書)が簡単にできていたため、債権譲渡契約のように面倒な手続きは必要ありませんでした。そのため発注側が通常決済(30~60日程度)へと移行すれば、理論上は中小企業にもメリットはあると考えています。