オフィス鴻

賞味期限と余剰コスト

2023年11月08日

街中のGMS(大規模商業施設)やコンビニエンスストア等で食料品を買うとき、賞味期限の長いものを探すことはありませんか?例えば牛乳を陳列棚最前面からとらずに、一番奥の商品の日付を漁るように探す方を時折見かけます。また、真夏のバックヤード(商品の搬入・搬出口)に商品がそのまま置かれているのをご覧になったことはないでしょうか?実は、この現実が小売業の利益を圧迫し、安い料金で運送委託するためトラック運転手不足の一因となっていること、結果的に消費者は高い値段で商品を買うことに繋がっているのです。

コストコの店内を見渡せば、多くの食料品を含む商品がパレット(フォークリフトで運搬できる板状のもの)に載せられたままの状態で販売されています。つまり、商品を陳列する作業が倉庫に格納される作業と同時に行われており、大容量販売を含めてその分の浮いたコストが商品価格に反映されているので、他店と比べて安く販売できる仕組みです。また、賞味期限を決めるのは、微生物試験(菌の繁殖)、官能試験(食感)、理化学試験(成分)と安全係数(1以下)から算出された数値なのですが、小売店は極力販売機会損失を減らすため納品業者に欠品ペナルティを課したり、返品(他店では再販できない)を日常的に行っています。その結果、食品製造メーカーは小売り側のマーケティング(販売予定数量)のブレに左右されながら予定数量を超える商品を製造し、最終的には自ら製造した商品を廃棄せざるを得ないのです。

言い換えれば、小売業のオペレーションと消費者自身の行動が商品流通に様々な弊害をもたらしている訳で、やっと経済産業省などが中心となって食品の賞味期限・消費期限の適正化が図られ始めたのが2017年頃ですから、それまでどれだけの量の食べられる食品が産業廃棄物として処理されていたかと思うと日本のSDG’sがなかなか進まないのも納得できます。次のコラムでは、食料品以外の流通事情に触れたいと思います。